朝焼けが海の肌を炎のように照らす日に
私は生まれて初めて太陽と空
そして風を知った
ちらちらと光る水面が、
徐々に空へと昇ってゆく太陽が
本当にほんとうに綺麗だった
私はひとり、
海に抱かれながら
夕暮れが来て、
そして星が輝く頃まで
じっとその模様を見ていた
帰る時、悲しくて悔しくて
まっくらやみの海の底に落ちながら
私は泣いたの
なんだか胸が潰れるような気持ちがしたから
しばらくして、私は恋をした
特別美しいわけでも、
頭が良いわけでもなかったけれど、
かわりにあたたかい心があって
とても優しいひとだった
でも、私には恋をする自由がなかった
ひどく父に怒られた夜
宮を飛び出して、
そのまま流星のように海を昇った
ざばんと顔を出して、
身も世もなく泣いた
きらきら光る星が憎たらしくて
涙に滲んだ空はぼやけていった
その時初めて知ったのだ
涙の味と、その色を
あれから、どれくらい経ったのでしょうね
初めて海の外を見にゆく孫娘を
精一杯飾り付けてやって
彼女がどんな顔をして帰ってくるのだろうと
手を振り送りながら思う
そして、叶うなら
どうかすてきな恋をして欲しいと思うのだ
「透明な涙」
1/16/2025, 3:10:26 PM