最近、私が主演の舞台に最前列で何度も見に来てくれるイケメンがいる。
私はそのイケメンを舞台袖で何度もコッソリ見ていた。
彼はこの舞台のお話しが好きなようだけど、何故か私が壇上に立って演技しているシーンは嬉しそうに目を輝かせて私を見ている。
私は女優としてはまだ駆け出しだけど、劇団の中では一番顔が整っていると自負している。
きっと彼は私の事が好きなんだろう。
誰もが羨むイケメンを夢中にできる私。私は彼へのファンサービスとして、舞台で目が合うたび彼にウインクして見せる。
彼は私のウインクを見るたび顔を真っ赤にする。
そして舞台の最終公演の日。私はときめく心を力に主役を演じきった。
彼は相変わらず最前列で見てくれて、幕が降りる頃には大号泣していた。
ああ、泣かないで。すぐに貴方に会いに行くから。
私は幕が降りた後、急いで私服に着替えた。自分の中で一番カワイイと思う勝負服だ。
彼はいつも舞台の後ミュージカルショップで買い物している。
私は買い物帰りの彼を見つけ、腕に抱きついた。
「ねぇ、今日まで応援ありがとう。良かったら私とお茶しない?。」
「何、だれ君。人違いしてない?。」
とびきりの笑顔で彼にデートを誘うけれど、彼は不快そうに顔を歪める。
「悪いけど、俺にはこの子という嫁がいるから。」
彼の反対の腕には、舞台の上で決めポーズを決めている主役の私の写真集が大事に抱えられていた。
《I Love…》
1/30/2024, 3:52:14 AM