ことり、

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「ほんっと腹が立つ!あのクソジジイ!」
そう毒づく姉に、僕は、幾度目かの
「そうだね、大変だね」を繰り返す。
姉は今、双子の子を連れて
実家に戻っている。
別居中。

両親と暮らしているわけだが、
特に父親が別居中の旦那を彷彿とさせて
苛々するらしい。知らんがな。
「なんか男の嫌なところを見すぎたわ。
アンタもそうなるのかしら」
いや、そうなって疎遠になってくれた方が
愚痴も聞かないで済む、と言いたくなって
飲み込んだ。
と同時に、旦那と父親が
イコールで見えるのは、姉の問題では?と
言うのも飲み込む。
父親と姉は、
昔から折り合いが悪かったとはいえ、
嫌われる父親は可哀想だ。

やるせない。
小さな頃から、お互いだけを
見て育ってきた。僕らきょうだいも双子。
向かい合って、鏡の真似っこをして
よく笑いをとった。
あの頃から、遠く遠くにきてしまった。
家族はいつも一緒、仲良し、も
幻想に見える。

「ねえ聞いてんの?こないだなんかもさあ」
はいはい聞いてますよ、と言いながら、
今日するはずだったエモい喫茶店巡りの
メニューを思い浮かべる。
メロンクリームソーダ、真っ赤なチェリー。
今度いつ食べに行こうかな。

8/26/2023, 1:00:10 AM