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朝、カーテンの隙間から差し込む陽の光とともにけたたましい目覚まし時計のベルの音が響き渡る。
「ん‥‥うぅん」
寝ていた男は鳴り響く目覚まし時計を止め、ベットから起き上がった。
大きなあくびをしながら頭を掻きむしり時計を見た。
朝の6時半、男はベットから降りるとのそりのそりと洗面所まで行き、顔を洗い歯も磨き、寝間着から着替え自身の仕事場である喫茶店のエプロンを着用した。
一階に降り、自身の店である『喰魔カフェ』の食事の下準備と自分の朝ご飯を作り始める。
あと少ししたら探偵事務所の面々やお客様がやってくる。

デジモンであり、七大魔王である自分がこんなことをやっているなど、昔の自分からしたら思いもよらなかったのだろう。それでも今の自分は七大魔王『ベルゼブモン』であり、このカフェのマスター、そして探偵事務所の仲間である『喰魔 ゼブル』なのだ。
俺はこの生活が案外気に入ってるみたいだ。
首にかけていた恋人であった『ベルスターモン』の写真を入れたロケットを見ながらそう思った。

時刻は8時、もうすぐ探偵達がやってくる。
すると

チリン チリン

お店のドアにつけていた鈴の音が聞こえ、そちらに目をやるとまだ眠そうな探偵と元気な声で「おはよう!」と言ってくる赤い恐竜デジモン、そして探偵の助手。
「ああ、おはよう。何時ものでいいよな」

今日もまた、何時もの平和な時間がやってくる。
なんでもない、幸せな時間が。

12/20/2023, 2:22:55 PM