いぐあな

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300字小説

無名の馬鹿

 旅路の果てに俺は未開の惑星にたどり着いた。地質調査をして驚いた。この星、ほぼ全てが恒星間航法に必要とされるレアメタルだ。
 地球を旅立って幾年月。ようやく、後ろ指を指して笑った奴らを見返すことが出来る。

 惑星に降りる。更に驚いたことに原住民がいた。しかし文明は地球の産業革命前。人も良く親切だ。これなら言いくるめて惑星ごと手に入れるのも容易い。俺はついている。

 今思えば欲の皮をつっぱねて、他者にこの惑星のことを漏らさなかった自分の浅はかさに感謝しかない。
 調査を兼ねて暮らして解った。惑星も住民も侵すことは出来ない。記録は全て消す。俺は無名の馬鹿のまま、この惑星で最後を迎える。
 これで良い。これで良いのだ。

お題「旅路の果てに」

1/31/2024, 1:02:32 PM