いぐあな

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300字小説

空に投げる

 卒業生のお別れ会を終え、先輩達を校門まで見送って部室に戻る。片付けを終えて、生徒玄関を出たところで、同じ二年生の彼に呼び止められた。
「なあ、前に告白してくれたろう? これから付き合わない?」
「え? 先輩と付き合ってたんじゃ……」
「先輩は卒業したから。じゃあ!」
 軽く手を振って駆け出す。その背中を私は呆然と見送った。

『俺、先輩のこと好きだから……ごめん』
 去年の春、桜の木の下でした決死の私の告白を申し訳なさそうに断ったのはなんだったのか。
「……私は彼女の補欠要員かよ」
 ひらりと薄ピンクの花びらが散る。
「……バカみたい」
 それでもさっきのさっきまで好きだったのに。
 クシャクシャになった恋心を私は空に投げ捨てた。

お題「バカみたい」

3/22/2024, 11:54:14 AM