海月 時

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【未来は変えられる。】
よく聞く言葉。変えられたとして何が残るんだ?

『ちょっと待って!』
目の前の彼が言う。どこかで見た事がある気がする風貌だった。しかし、今はそんな事どうだっていい。
「お前には関係ないだろ。止めるなよ。」
俺は目の前の彼を睨みつけた。しかし、彼は怖じ気付く事はなく、澄んだ瞳をして言った。
『まだ間に合う。今からでも、やり直せるよ。』
「お前に何が分かるんだよ!」
苛立ちから声を荒がった。そして、無意識に涙が出た。
「俺だって、普通に生きたかったよ。」

俺の両親は不慮の事故に遭い、他界した。そして、俺の人生は一変した。叔父夫妻に預けられた俺は、毎日奴隷の様に扱き使われた。最初はまだ良かった。しかし、段々と俺への扱いはエスカレートしていき、今では存在全てを否定されている。学校でも俺は、はみ出し者だった。両親がいない、可哀想な子供。そのレッテルを貼られ、周囲の態度が変わった。今では仲良かった奴らに虐められている。次第に、俺の心はすり減っていった。辛い。その言葉だけが頭を支配する。気付けば俺は、屋上に立っていた。

「人間って馬鹿だよな。世間体しか見てなくて、両親の居ない俺は、何の価値もないように見えているんだよな。」
『そうだよ。そいつらは愚かだよ。でもね。逃げようとする君はもっと愚かだよ。未来を捨てるな。』
彼の言葉には、優しさも強さも感じられた。
「お前に何が分かるんだよ。俺だって、立ち向かったよ。でも、駄目だったんだ。怖いんだ。」
『俺も、君と同じ境遇だった。それでも、生きた。足掻き続けた。自分のためではなく、未来のために。』
久しぶりに、心に温かさが宿った。俺もこんな風に未来に希望を持てるだろうか。持てたら良いな。
「ありがとう。大事な事を思い出した気がするよ。」
『良いよ。俺もそうだったから。』
「ところで君の名前は?」
俺が聞く。すると彼は少し悪戯ぽく微笑んだ。
『俺は、未来の君だ。』

俺はあの時、生きる事を諦めないで良かったと思う。俺の未来はきっと明るい。過去に戻って、同じ状況になっても、俺は同じ未来を選ぶだろう。

6/17/2024, 3:26:24 PM