→短編・日々の隙間、ワンクッション。
真夜中、ワンルールの小さな部屋から逃げるように外に出た。
夏が終わりに近づいている。絡みつくような湿気を伴った暑さはどこにもなく、静かな住宅街に涼しいと感じるくらいの風が通り抜けた。
普段は歩かない方面へと、ポツポツ灯る街灯をナビゲーションに進んだ先に、一件のコンビニがあった。
まるで街灯の親玉みたいに、眩いばかりの明るさで周囲を煌々と照らしている。
駐車場に車とトラックが1台ずつ。表の灰皿で煙草を喫いながらスマホを見る人。カウンター越しの店員は何やら作業中。品物を物色する客が、雑誌コーナーとドリンクコーナーに居た。
夜中にもかかわらず、昼間と同じような日常がそこにあった。
振り切れない日常、逃れられない生活、潰えていく夢、日々浅くなる自己肯定感。
コンビニのゴミ箱に全部突っ込んで、やり直せたらいいのにな。そしたら、別れた彼女ともやり直せたりすんのかな? 同期との飲み会も参加できたり?
そんな自分を想像してみて、それはもはや他人だな、と笑いがこみ上げる。
結局のところ自分で納得する道にしか進めない不器用人間ということだ。ムリだ、粘れる を繰り返すしかないんだろう。
「よし!! ペン入れ、残り3ページ!」
紙パックの珈琲牛乳を飲みながら、再び街灯を渡るように進む。
こんな夜があるから、何とか生きている。
テーマ; 心の灯火
9/3/2024, 2:13:51 AM