ふるきよき

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女「ねえさぶぅい。そのマフラー、貸して。うん、あったかい。でもちょっとくさぁい。ちゃんと洗ってるの? なんかタバコの匂いするよ。ショウって吸わないよね? 誰のだろ。違う女にも貸してんだったら許さないからね笑 うそうそジョーダンだよぉ。でもジョーダンじゃないからね。何かあったら絶対責任とってもらうから、ね。疑わしいことしたからマフラー、しばらく借りるね。うふふ、あったかぁい」

男(僕には2つ離れた姉がいたんです。親は僕が高校1年の時に事故で亡くなって、貧乏な家でしたから。姉は色々と仕事を掛け持ちして僕を大学まで送り出してくれました)

女「サユリって覚えてる? こないだ教えた。そうあの子。ケバいよね笑 でね、そのサユリがさ、テレビの人にスカウトされたんだって。今度シロウト集めた深夜番組にレギュラーで出るって話なの。なんかもうプロデューサーの人とご飯とか行っちゃってさ、すっかり芸能人ぶってるの。そんな可愛いと思う? サユリのこと。あたしきらぁい。前髪とかこーんな固めちゃってさ。でも男の人はああいうのが好きなのかな。ショウも私にああいう格好してほしい?」

男(姉はほんとに太陽のような人でした。身を粉にして働いて。いつも弱音ひとつ吐かず笑顔で。いつか恩返しがしたいと思っていました。それで最近羽振りの良い友人に頼み込んで稼げるって評判のシゴトを紹介してもらったんです。でも、それが間違いでした。いわゆるシノギってやつで、気付いたときにはもう手遅れだったんです)

女「ねー、寒いって、ば! ショウの上着貸してよ。ショウはこのパンスト、貸してあげるから笑 いらないの? 結構売れると思うよー。てか旅行行きたぁい。ショウってばバイトばっかじゃーん。そんなに働いてどーすんの? そのお金であたしにナニくれるの? ダイヤとかあたし欲しいなぁ。ねー、いつが空いてるの? 私予定見るからその日空けといてよ。最近雨続いてて嫌だよねー。早く晴れないかな」

男(やがて取り立てが激しくなって。怖くてたまらなくて、僕は逃げたんです。無断で連帯保証にしていた姉を残して逃げました。それから姉には会えていません。僕は意気地がなくて、せっかく姉に入れてもらった大学も、その時辞めてしまったんです。知らない街に流れ着いて、今はキャバレーのボーイをしています。姉には謝りたい気持ちとお金を返したい気持ちでいっぱいですが、今はまだその勇気がないのです)

女「ショウ。ショウって、ば。ねー車買いなよ。それで寒い日は迎えに来てよ。凍えちゃったらどうするの? ねー車あったら旅行とかも楽しいじゃん。ね、行こう? お金なんて貯めるよりパァと使おうよ。いまが1番大事じゃんか」

男(僕は自分なりにやってるつもりです。彼女のことも、それなりに愛しているつもりです。でもほんとは、姉がお嫁に行くと聞いた時。姉が僕からいなくなるのが寂しくて、僕は姉から何もかもを奪ったんです。ずっと僕のためにいて欲しくって。僕から離れるくらいなら、僕は姉を見殺しにしたんです)


太陽のような

2/22/2024, 4:55:41 PM