すばる

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週五回。平日朝のルーティン。
駐車場から職場まで、徒歩五分の道程。
そこですれ違うのは、私と同じく毎日決まった時刻に家を出て、車を繰り、そうして駐車場から職場のある棟まで五分の道程を歩むいつもの人たちだ。
私と同じ制服を羽織った彼らとは、十年近く同じアスファルトを踏む仲であるというのに、まともに話した事はない。
駐車場からそれぞれの職場に出勤するまでの道程を、ただただ共に歩くだけ。ただの顔見知り。
それでも、多少前後して各々にタイムカードに出勤時刻を刻む時だけ、すれ違う彼らと接点ができる。
狭い出入り口で、入る人と出る人が鉢合わせると、皆そこで必ず交わす。
「おはようございます」
その言葉だけが、毎朝顔を合わせ、すれ違い、そして各々の職場にへと向かっていく私と彼らを繋いでいる。
なんて事はない。誰しもが毎朝誰かに告げる九文字。
しかし、そのたった九文字で、人は些細な形ではあっても繋がることができるのだと。
それぞれの職場へと向かう背中を見送りながら、私もまた自分の仕事場にへと向かいながら、思ったりするのだ。

/すれ違い

10/19/2022, 12:19:38 PM