ひとつ

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●鳥のように


 莉世子は地味な女だった。
 化粧をしても変わり映えのない顔立ちに加え、貧相でどこか暗い。

 それはまるで鳥のように――。
 多くの鳥はメスが地味でオスの方が派手だ。
 だから私は莉世子が嫌い。
 
「莉世子、おめでとう」
「江沢さん、ありがとう」
 私は爽やかに言うと、莉世子の横に立つ嶋野を見た。
 罰の悪い笑顔を返し、嶋野はウェディング姿の莉世子を伴いその場を後にした。

 嶋野は私と莉世子を二股にかけていたのだ。
 選ばれたのは――。

 嶋野は勤め先の会社の跡継ぎで、派手で金回りの良い男だ。

 なぜ私ではなかったのか。
 全身の手入れを欠かさず、嶋野に負けないように装い尽くしてきたというのに。

 派手な嶋野と地味な莉世子が並ぶと、とてもちぐはぐで何だか笑えてくる。
 
 それはまるで鳥のように――。









 

8/21/2023, 11:19:55 AM