空が泣いていた。
風は吹き荒れ、川は氾濫する。
雷も間断なく轟き、まるで世界の終末の様相を呈していた。
一時間前までは、雲一つない青空だった。
しかし急に雲行きが怪しくなり、雨が降り出し始めたかと思えば、
テレビでも、突如起こった災害で画面が埋め尽くされていた。
世界中の誰もが『なぜ?』と首を傾げる。
僕を除いて……
「僕のせいだ……」
僕は呆然と立ち尽くす。
この状況を引き起こしたのは、他ではない自分なのだ。
僕は、自らが犯した罪に後悔してもしきれなかった。
でも言い訳はさせてもらいたい。
信じてもらえないかもしれないが、始めはただの出来心だった。
9月半ばに入り、未だ残暑が厳しい今、ひとつ雨を降らせて涼を取ってやろうと思ったのだ。
つまり雨ごいをして、雨を降らせようと思いつく。
だが基本的に雨ごいなんて迷信だ。
もっと確実に降らせたい。
そう思った僕は、今日公開されたばかりの最新AIに聞いたのだ。
『今すぐ確実に雨を降らせる方法』を……
そして最新AIはすぐに答えをはじき出す。
必要なものは、『般若の面』『心霊写真』『使用済みの藁人形』などなど……
まったくもって意図が不明だったが、なんか怖い系の物を用意させられる。
そして指示された手順で、雨ごいの儀式をしたところ――
空が泣いた。
◆
そして今に至る。
さすがにここまでは、予想だにしてなかった。
明らかにやりすぎだ。
ボケっとしている場合じゃない。
早く止めないと!
僕はパソコンで最新AIを起動しようとする。
だが――
「雷でPCがダメになってる……」
もはや打つ手なし。
人類は――いや、地球は僕の不始末で滅亡する……
「それでも私の息子?
情けない面ね」
「母さん!?」
打ちひしがれている僕の後ろから、母さんが大股でやって来る
「事情は把握しているわ
あなたの独り言でね」
「それは……」
「後で特大の説教をしてあげるわ。
息子の後始末をした後でね」
母さんは外に向かって歩き出す。
「母さん、危険だよ!
一緒に逃げよう!」
「何を言っているの?
私は育児のプロよ。
泣いている子の寝かしつけで右に出る者はいないわ」
そういうと母さんは手に持っていた物を天高く掲げた。
それはガラガラだった。
「ほらほーら、いい子いい子。
ねんねしましょうねー」
何ということだろう。
あっという間に雨はやみ、風は凪ぎ、雷も聞こえなくなった。
「あら、いい子。
小さい時の息子よりもいい子だわ」
あっという間に世界は静けさを取り戻したのだった。
「母さん、凄い……」
「ふふ、子育ての経験が生きたわね。
それよりも――」
母さんは僕を睨む。
僕はその目線の意図を察する。
そういえば、あとで説教をするって言ってたね。
「覚悟しなさい!
二度と悪さを出来ないように説教してあげるわ!」
「ごめんなさいいぃぃ!」
僕がいい歳でマジ泣きしている間、空は泣くことなく静かに晴れ渡っていた。
9/17/2024, 1:04:09 PM