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桜のように、儚くなれたらと思う。

「なんで?」

「そうすれば、みんな、大切にしてくれるから」

貴方の目も見ずに、私は桜を見上げながら言った。

1年の短いうちしか咲かない桜は、咲いている姿も、散っていく姿も美しい、と思う。

でもそれは、この桜の人生は短いものだと、儚いものだと知っているから。

「貴方の言う皆が、貴方を大切にしなくても、私が貴方を大切にする」

私は貴方の顔を、見つめた。

貴方の顔は、声は、言葉は、こんなにも、頼もしくて、凛々しいのに。

桜のように、美しいのに。

「それじゃ、駄目かな?」

なんで私は、こんなに弱いんだろう。

桜のように、儚くなりたかったのに、桜は私の想像以上に強くて、頼もしくて。

「駄目なわけ、ない」

私の顔は、声は、言葉は、頼りなくて、臆病で。

そんな私の目から流れ出る涙を、私の口から溢れ落ちる言葉を、今まで何度も、貴方は優しく拾い上げてくれた。

「貴方みたいな、桜になりたい」

咲いている姿も、散っていく姿も美しい。

そんな桜に、なりたい。

4/5/2025, 7:53:01 AM