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走る。懸命に走る。
見た目はキラキラと誰もが羨むような輝きを放っている硝子細工の道は、背後からひび割れて崩れて、白い彼方へと落ちていく。
まるで、ほんの少しでも休むだなんで許されませんよって言われているみたい。

走って、走って。ついに足がもつれる。
もっと気をつけなければいけなかったのに。
ひとつの間違いも許されなかったのに。
足下が崩れて、私は彼方へと落ちていく。

どうなるの?しんじゃうの?
どうしたらいい?もう戻れない?
嗚呼、そんなことよりも。

──ごめんなさい……


頬に温かいものが触れて、意識が浮上する。
私ったら、眠りながら泣いていたみたい。
瞬きをすると眦から雫が頬に零れ落ちて、そうしたらまた大きな舌で頬を舐められる。
「……くすぐったいよ」
思わず微笑んでしまったら、お月様みたいな金色の瞳が微かに細まった。
「怖い夢でもみたんか?」
「……わかんない。忘れちゃった」
「なんだそりゃ。まあいいや。朝までもーちょっとあるし、寝とけ」
「……ん」
銀の体毛にぎゅっと抱きついて顔を埋める。
私の意識はゆらゆらとまた、夢の世界へと旅立っていく。
ふわふわ、ふわふわ。温かいなあ。
貴方と手を繋いで、お月様に乗って空を飛ぶ夢を見たわ。
なんてしあわせなゆめ。

6/19/2024, 7:42:42 AM