夢見る少女のように。
白馬の王子様が、蹄の音と共に迎えに来てくれるその日を、ずっと、ずっと願っている。
―――なんて。
もう大学生になるのに、そんなことばかり考えていたら、単位を取り逃してしまうかもしれない。
危ない、危ない。気を引き締めなければ。
と、制服を脱ぎ捨て、自分一人で選び抜いた私服を身に纏い、ひらりと姿見の前で前髪を整えていると―――目の前が光った。
鏡が太陽光を反射した―――というわけではなく、本当に、目の前が光に包まれたのだ。
思わず目を瞑ってみるが、変化はない。いつもは暗く閉ざされるはずなのに、まるで瞼の裏が光っているみたいに、視界が真っ白だ。
途端に不安になる。なにかの病気なのではないか、と。
どうすることもできずに、暫く経った私は、観念したみたいに目を開いた―――そして。
そして、開いた視界の先は、まるで異世界だった。
童話に出てくるような、西洋風のレンガ造りの家々が立ち並び、時折、レンガ道を馬車が通過する。
周りを歩く人たちは皆、私のことを不審な目で見ていた。
日本の、アポートの一室に、ついさっきまでいたはずなのに。
なのに、私がたった今立っている場所と言えば、ドイツのロマンチック街道を思わせるような場所だ―――行ったことないけど。
これは、もしかして。
いわゆる、異世界召喚ってやつ―――!?
という諸々まで妄想するのがオタクという生き物です⋯⋯よね?
6/7/2025, 2:13:40 PM