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ラララ、歌声が夜に木霊している。

また、あの美しい声が私を呼んでいる。

あの声が私に救いを求めている。

助けを欲しがっているだけど…何故か…、

あの声は聞き馴染みがある。

何処かに忘れた記憶があるような、ないような、

思い出して良い記憶なのか、駄目な記憶なのか、

まだ、分からない、分かってはいけないのかも?

だけど、そちらへ行かなければ行けない気がして

身体が勝手に動いた、そこには、見覚えのある、

背格好をした、一人の女性が星空へ向かって、

歌っていた、それを私は影から見ていると、

それに気が付いたのか、歌声が止まり戸惑いを

隠し切れずに動揺していた、けど、顔を見た瞬間

目を見開いて此方に走ってきた、何でだ?

そして、私は抱き締められた、何故か。

分からず気が動転していると、女性が喋った。






"やっと…会えた…○○、平気?無事?

あの頃の記憶ある?ないなら、今は私にだけ、

付いて来るだけで良いから、来て欲しいな。"






訳も分からず付いていくと、そこは懐かしい、

気配や景色や、匂いが広がる街だった。

私にはやはり理解ができなかったが、

少しだけ思い出した、この場所は故郷だ、

ただそれだけは、分かる。

だけど、もっと思い出さなければいけないような

何だっけな、もう、記憶消えてて分からないや。





本当にそれは、消えた記憶?なの?

それの見分け方も知らないなら、まだ、

貴女は夢の中で彷徨うただの哀れな生け贄。

貴女なら、出来るはずだよ、この場から、

抜け出して現実へ戻ることが。

3/7/2025, 10:54:44 AM