彼女はおのおので傘をさすのを嫌がる。
ひとつの傘のほうが話しやすいじゃん、と。
ひとつの傘に2人だとどうしても小さい。肩が濡れる、カバンが濡れるし、中の本が心配だ。わたしは別々のほうがいい。
彼女は雨に濡れるのは苦じゃないし、持ってきてもすぐ忘れるから、と傘を持ってくることすらしなくなった。出会った頃は雨の日には自分の傘を持ってきていたはずだ。
濡れるのは苦じゃないと言われても傘をささない人が隣にいれば、自分だけ傘をさすのは憚られる。
傘は背の高い彼女の方が持つ。わたしは濡れたくないからぴったりと彼女の傘を持つ手に寄り添う。彼女もわたしの小さい身体にぴたり寄り添う。
彼女はひとりでは生きられない。傘ひとつ分の孤独に耐えられない。
#相合傘
6/20/2023, 5:56:16 AM