「またね」
そう言って私に手を振ったあの日からずっと貴方が私の光だった。
君は今何をしているのだろう。
泣いてやいないか、寂しい思いをしていないか。来日も来日もきみのことを考えていた。
この思いが恋へと昇華するのも速かった。きみへの思いが恋慕だと知ったあの日から私はきみに会いたくて、会いたくて、会いたくて。ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと再会を待ち望んでいたというのに。ああ。
きみそっくりのガキが私の祠(いえ)を壊すだなんて、なんということだろう。
「おい、おまえ」
ガキが顔を赤らめた。ああ、ああ、気色が悪い。貴方と同じ顔をして、貴方と違う反応をする。貴方は私にそんな顔を見せたことなどないくせに。なんなんだ、このガキは。
「かわいい」
ポツリ、と漏らしたガキの顔がほんのりと赤に染まり、声は高揚している。ガキの反応には身に覚えがありすぎた。貴方に対する私とそっくりだから。
「あ、ごめんなさい。これ、貴女の家ですよね」
どうしよう、とあわてふためくガキはあの頃の貴方を彷彿とさせた。懐かしい。貴方はこのガキと違って今にも泣き出してしまいそうだったけれど。
「祠が直るまで家に来ませんか?」
「さっさと直してくれたらそれでいい」
でも、となお言いつのろうとするガキに私は貴方の話をする。ここで待っている人間がいるから行かないと言えば引き下がると思っていたのに。
「それは多分、僕のおじいちゃんだよ」
ああ、だから顔がそっくりなのか。
もう亡くなった、という言葉に心が痛くなる。おかしい、化物のはずなのに、あるはずのない心臓が痛むなんて。
ガキは私の手を取った。
「約束を簡単に破ったおじいちゃんより僕のほうが貴女を大事にするよ」
私はガキの頭を叩いた。
「二十年早い」
「二十年過ぎたらプロポーズしてもいいってこと?」
なんだ、このガキ。話が通じない。
まぁ、どうせすぐ忘れてしまうだろう。
貴方だって忘れていたのだから。
「好きにしろ」
適当にした返事に後悔するのは、それから一ヶ月後の話だった。
1/19/2026, 11:15:01 AM