白糸馨月

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お題『最悪』

 最悪な人生だった。おとなしいと言われる性格のため、学生時代はどの段階でもいじめを受けた。
 勉強を邪魔されることが多かったので、頭は悪く、運動能力も劣っていた。
 社会人になって、就職した先でも俺は上司にこきつかわれた。俺一人だけ残業させられることがたびたびあった。
 唯一味方になってくれた母親は、もともと体が弱く、最近息を引き取った。ただひとりの肉親である母親の治療費を稼ぐためなら頑張れた。でも、その理由はもうない。
 その時、俺の中でなにかが崩れたんだ。
 気がつくと俺は仕事帰り、電車のホームから飛び降りて終電にはねられて命を落とした。

 場面が変わって、若かりし母親の姿があって、俺の手は小さかった。ここで、自分がまた人生をやり直すチャンスを得たことに気がつく。
(今度こそ、最悪な人生を回避しないと)
 赤ん坊の姿のまま、俺は決意を新たにした。

6/6/2024, 11:23:05 PM