君が隠した鍵
「ぼく、かけっこで一位取ったよ!」
「算数のテスト、上手くできなかった。」
「おかあさんのオムライス、おいしい!」
あなたは、毎日いろんな表情を見せてくれる。
それはまるで、扉を開けるようだと思う。
でも、ある日、
ひとつの扉が開かなくなってしまった。
あなたは、私に涙を見せなくなったのだ。
「開けてよ」と言っても、「嫌だ」の一点張り。
私はどんなあなたを見ても、嫌いになんてならないの
に。
もう一度、ドアをノックする。
「ねぇ、知ってる?
涙を流すことは、とても素敵なことなのよ。
あなたが、何かにつまづいて、それでも逃げずに、
立ち向かおうとしているってことじゃない。
泣くことは、何も悪くないし、恥ずかしいこと
じゃないわ。」
そう声をかけると、
あなたはドアから少しだけ顔を出した。
「……。ほんとに…?」
そう言うあなたは、目にいっぱい涙をためながら、涙がこぼれないように上を向いていた。
「…でも、僕は、強くなるって決めたんだ。だから、泣かない」
そんなことを言うもんだから、私はつい、笑ってしまった。
笑わないでと怒られたが、あなたがとても愛おしくて。
ほら、嫌いになんてならなかったでしょう?
あなたがどんなに歳を重ねても、
どんな表情を見せても、私はあなたが大切なのよ。
あなたは鍵を隠したかったのかもしれないけれど、
あなたがどんな表情を見せてくれるのか、
私は毎日、楽しみで仕方がないのに。
これから先、扉を開けてくれない時があっても、
その時に、私はあなたが大切で、大好きだということを
思い出してもらえるように、
私はあなたを、ぎゅっと抱きしめた。
11/24/2025, 3:46:05 PM