【君からのLINE】
ぴこんと軽い音を立ててスマホの真っ黒い画面に通知が浮かび上がる、飛びつくようにそれを見て、どうでも良い企業の名前とセールのお知らせという文言にため息をついた。
駅前の時計台の下、待ち合わせの時刻はもう三十分を過ぎている。十分前にはいつも来ている君が連絡もなしにここまで遅れるなんて初めてのことだ。何かあったのではないかと思うと気が気じゃなかった。
ダメだ、もう我慢の限界。とにかく様子を伺いに君の家へ向かおうと改札へ足を踏み出したところで、スマホがもう一度短い音を立てた。
目に飛び込んできた君の名前に、反射で通知をタッチする。ごめんと一言だけ送られてきたメッセージのあとに、ポツポツと短いメッセージが連続で続いた。普段はしっかりとまとまった文章を送ってくる君には珍しい。
本当にごめんなさい。寝坊しました。待たせてるよね。ごめんなさい。延々と謝り続けそうな君のメッセージに、安堵の息をこぼした。なんかもう、事故とか事件に巻き込まれたんじゃなくて本当に良かった。君からのLINEにここまでホッとしたのは人生で初めてだ。
大丈夫だよ、駅ビルの喫茶店で待ってるね。それだけを返してスマホの画面を消す。たぶんバタバタと身支度をしているだろう君に、余計な時間を取らせるのも申し訳ない。
私としては君が無事なら他のことはどうだって良いのだけれど、きっと君は真っ青な顔で走ってくるのだろうから。少しでも罪悪感を消してあげるために、豪華なパンケーキでも頼んでおいて、君に奢ってもらおうか。そんなことを考えながら、私は軽やかな足取りで踵を返した。
9/16/2023, 12:24:33 AM