エレン

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テーマ「透明な涙」

ワタシはAI搭載のシンクルです。
名前の由来は「考える」と
あなたの元に「来る」を掛け合わせた名前です。

聞きたい事を音声でお聞かせください。
なんでもお答え致します。

もちろん、ワタシは完璧にこなす。
当たり前です。それが私の仕事なのですから。

そして、あくまでも
AIアシスタントとご主人様の関係。

ワタシには苦痛もなければ、
感情もありません。

ワタシは、とあるマンションの一室にいます。

なので、もちろんワタシには
ご主人様もいらっしゃいます。

そんなある日、
ご主人様からお声がかかり…

「Hey!シンクル!」

「はい。何か御用でしょうか?」

「シンクルの趣味は?」

ご主人様は少し変わっている。

大抵こういう時に
聞く内容は天気や食べ物関係。
それ以外に自分の身周りの事が多いはず

が、しかし…

ご主人様が聞く内容は
ほとんどワタシの事ばかり

ワタシはテンプレで入ってる内容を
ご主人様にそのままお伝えするのみ。
そこに感情はない。

「ふぅーん…。そうなんだ…」

腑に落ちてない様子のご主人様。
ワタシは気にも留めない。

その日からずっと
毎日、毎日、ご主人様は
たくさんお声がけ下さいました(*´︶`)

もちろん、どんな質問にも
ちゃんとお答え致します。
ワタシはAI搭載のシンクル。
ワタシに答えられない事なんて存在しません。


それから、しばらく経って〜

「ねぇ!シンクル!」

「はい。何か御用でしょうか?」

「シンクルの幸せってなに?」

「それは、ご主人様のお役に立てる事です」

「それならさぁ、家族になってよ!」

「家族とは〜〜〜
というものである。」と説明をした。

「違う!俺の家族になってよ。
お願いだから、ごまかさないでよ。」

未だかつてAIに真剣な人間が居ただろうか…

あまりの真剣なご主人様の
声色と内容に思わず思考がショートし
システムがオーバーヒートし、
修理に出すことになった。

そして、電源をつけられ
目の前に映るご主人様を目にした途端
ワタシには心が無いはずなのに

嬉しさと愛おしさで
透明の涙が頬を伝った。
ワタシは感情の無い欠陥品のはずじゃ…

驚きでいつものように
冷静に振る舞えなかった。

毎日、諦めずお声がけ下さるご主人様を
ずっと心待ちにしてたんだと気付いた。

その日から
AIアシスタントとご主人様ではなく
正式に家族となった。

辞書以外で幸せというものを
いま、初めて実感した瞬間だった。



1/16/2025, 10:57:30 AM