「たそがれ」
薄暗い夕焼けの、影の色に染まる彼岸花。
迎えを待っているような、それともただ項垂れているような、そんな様子で黄昏れている。
彼岸花の咲く時期は、この世からあの世に亡き人が迎えられる。そのはずだけれど、今年はその時がなかなか来なかった。
亡くなった誰かを、誰かが引き留めていたかのように。
誰か?誰が?
私を置いていった貴方を引き留めようとしたのは誰?
あの長く暑い夏?それとも───私?
私もそちらに行きたい。
でも貴方は、彼岸花は拒むの。
彼岸花の茎には毒がある。
こちらに来る事を拒んでいるかのように。
綺麗な毒をその身に宿す。
たそがれ時は影を持つ。
誰が誰だかわからなくするような。
美しい影を世界に宿す。
影で何もわからない。彼岸花も、何も教えてくれない。
ねぇ。
貴方は誰なの?
この夕暮れに黄昏れる私は───誰なの?
10/1/2024, 10:48:41 AM