ネジが外れたウサギ

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卒業して君は地元を出た。

卒業しても私は地元に残った。

君はメイクアップアーティストを目指して冒険に出た

私はニット作家として編み物の教室の講師になった。


「いつかまたあったらお互いの才能を開花しようね」


君が何気無く言ったあのひと言が私には耐え難かった


手先が器用な君はモード誌のメイクを真似して

学園祭で観客を沸かせた。

私より『才能』があったのは相違ない。


私は編み物はできるけど苦手な技法が多かった。

デザインが頭に浮かんでも再現できない。

到底、君のメイクを引き立てる服を編む自信がなかった。


でも、編み物教室の師匠に相談すると

「努力せずに開花させようとするからうまくいかない。

 基礎ができるあなたなら、今からでも間に合う。

 もっと練習して、いろんな作品を作りなさい。

 わからないことがあるのは私も同じ。

 技法は進化するもの。

 あなたが成長した時、きっと彼女と再会できる。
    
 いい化学反応が生まれ、いいルックができるわ」


師匠のそのひと言で私は、不安が自信に変わった。

7/23/2025, 1:44:12 AM