いぐあな

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300字小説

勇者の帰還

 村から北へと向かう道を眺め、今日も私は木に水をやる。
 長引く魔王軍との戦いに第五次討伐隊の勇者として選ばれた婚約者が
『必ず帰ってくるから』
 と渡してくれた白い花の咲いた枝。それを植え、育てた木に今日も彼の無事を祈る。

「第十次討伐隊の勇者が魔王を倒したぞ!」
 それまでの討伐隊がなしえなかった魔王討伐をついに成功させ、無事勇者が王都に帰還したらしい。国中が喜びに湧き、こんな辺境の村にも伝令が回り、皆が盛大に祭を催す。
 ようやく訪れた平和に誰もが安堵し祝うなか、私は今日も一人、北へと向かう道を眺め、木に水をやる。
「……あ」
 一筋の光が差し込み、木の枝に送られたのと同じ白い花が咲く。
「……おかえりなさい。貴方」

お題「一筋の光」

11/5/2023, 12:25:25 PM