「ゆみって好きな人、、とかいねーの?」
「好きな人?うーん、いるっちゃいるね、うん。いるわ」
「マジ?!」
「耳元でうっさい」
私の名前は白神ゆみ。高校一年生だ。そして私に好きな人がいるかどうかを訪ねて来たのは夏目春樹。隣の席のヤンチャないわゆるDQNだ。でも根は良い奴なのだ。
「誰?誰?」
「言わねーよ。」
「えー、いいじゃん!教えてよ!!」
「うるさいからやだー」
「夏目漱石でしょ、あんたの好きな人」
「え?夏目漱石ってあの夏目漱石?文豪の?」
「ちょっと優里ー。なんで言っちゃうかなぁ」
この子の名前は佐久間優里。ショートヘアの私とは対象的に長い綺麗な黒髪。顔はアメリカ人と日本人のハーフ。学校の男子からモテモテなのだ。本人は自覚ないみたいだけど。そして優里は私の幼馴染。家が近所で親も仲が良い。私が歴史オタクで文豪の夏目漱石にガチ恋しているという事を知っている数少ない友人の一人である。まぁ私が夏目漱石を溺愛しているという話は優里にしかしたことがないのだが、何故だか私が仲良くしている子達に広まっていた。まぁみんなアニメオタクとかだしそこら辺理解してくれるから良かったが夏目春樹、コイツは違う。
どちらかというとアニメやゲームはせず外で友人数人と遊ぶような部類の人間だ。きっとそういうのに理解がない。
「ええー。まじか、、」
ほらな。まあ、普通は引くよ。歴史の人物にガチ恋だなんて、普通の人間からしたらあり得ん話だ。そう頭でわかっていながら私はつい反論してしまった。
「仕方ないじゃん!好きなもんは好きなんだもん!好きになった人がただ昔の人だったってだけでしょ?!いーじゃん別にぃ!」
「いや、悪いとは言ってねーよ。恋愛は人それぞれだし。」
「じゃあさっきの反応は何さ!絶対引いてたじゃんか!」
「いや、引いてたとかじゃなくて、、ガチで恋愛的に見てんのかなーって、推し?とかとは別なの?」
「いや、あんね?私もさ、初めは推しだったのよ?でもね、TikTokで流れてきちゃったのさ。夏目漱石に対する想いを熱く語ってる動画が!その動画見たらね普通の推しなら共感できるんだけど、夏目さんは違ったのよ。なんか動画見てたらイライラしてきたし、嫉妬?って言うのかな?好きな人にする嫉妬に近い感情が生まれてきてさ!この溢れる気持ちを!恋と言わず!なんというんだ!クソが!」
「な、なるほど」
「てかさー。アンタも苗字夏目だよねー。」
「ん?あー確かに。」
「苗字くれよー」
「ふぇ?」
いきなり素っ頓狂な声を出すからびっくりした。春樹の方を見ると少し頬が赤い。なんで?私変なこと言ったかな?そう思っていると
「そ、それってどういう意味?」
と、春樹が口を開いた。
「女の私に言わせないでよ」
「…え?」
「アンタが苗字寄越せば実質私は夏目さんと結婚したことになるじゃん?!」
「んなことだろうと思ったよ」
バシッ
「いて、、何すんのよ。優里」
「全く、、アンタって子は。はぁ。春樹くんの純粋な恋心を弄ぶだなんて、、最低ね、、」
ゴミを見るような目で優里はそう言った。私が遊び半分で優里の胸を揉んだとき以来だ。
「えー?ただ苗字交換してほしいって言っただけじゃん」
「なんだ、そゆことか。はぁ」
怪訝そうな顔でため息をつく春樹。何なのだ一体。私なにか悪い事をしたのだろうか?
-完-
2/5/2023, 10:47:30 AM