まにこ

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会うは別れの始まり、そんな言葉をA子はぼんやりと思い出していた。
最初に出会った時は胸がドキドキと高鳴ったのを覚えている。
それはまるで初恋のトキメキのような、それでいてどこか懐かしいような。
それでも先人が遺した言葉はどうしてこんなにも世の理にかなっているのだろうか。
「嗚呼、」
あなたとはこれから何度別れるのだろう、こんな別れが来るのならばいっそ初めから出会わなくていいのに。
ゴキジェットと書かれたスプレー缶を手に、A子はいよいよ対峙する。
後生ですから見逃してください、何となくそんな声が聞こえてくる。
ならぬ、お前だけはタダで帰すわけにはいかないのだ。
会うは別れの始まり、それならば最初から出会いたくない。私の前に二度と姿を見せないでおくれ。
シュー!と勢いよくスプレーの噴き出す音が無音の部屋に響いた。

9/28/2024, 11:37:55 PM