小さな世界。それは、家の中。
少年は、自らそこに籠っていた。
そこには、家族がみんな揃っていて、安心する。哲学者の父と、音楽教師の母。優しい祖父と祖母。
穏やかな日々。不登校気味な少年に、家族はとくに厳しいことは言わなかった。
ある日、「いってきます」と言い、それぞれの職場へ向かった両親は、帰って来なかった。
ほどなくして、祖父母は親戚の元へ身を寄せることを提案する。しかし、彼は断った。
この世界が廃墟のようになるのが嫌で。ふたりが帰るところが無くなるみたいで。
独り、閉じた世界に残る。
ふと、窓の外を見ると、君がいた。
7/1/2023, 10:15:22 AM