推しの嫁

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ふぁ〜よく寝た、時刻は午前2時。
やはり電車は気持ちいいな、この揺れ心地は赤ん坊の頃を思い出す。



今日は大きな仕事達成出来たし、お疲れ様会で社長や部長からかなり功績を称えられた!これ程やり切った事は無い!
ご褒美の3軒ハシゴもいつもよりも苦ではなかったな。

さてと、このアナウンスは最寄り駅に着いたこ…ろ……

え?

は?

ここは……どこだ!?

ま、まさか終点まで来てしまった!?

まぁよくある事だし、終点から自宅までそう遠くないからタクシーを呼べばなんとかなる。車掌の点検が来る前に電車から降りなくては。



何とか電車から出られた。
ンにしても終点はこんな駅だっけ?最後に来たのが半年以上前だから忘れてても仕方ない。さて、改札を出てタクシーを呼ぶとするか。

<聞き慣れない改札音と暗闇と共に駅を去る。>

駅員すらも居やしねぇや。
駅前の時計台が指す時刻は午前2時3分。
タクシー捕まるかな。

〈使い慣れた携帯を開き、お馴染みのタクシー会社に電話をかける。〉

プルルル、プルルル、プルルル…
プルルル、プルルル、プルルル…
プルルル、プルルル、プルルル…プツッ
お繋ぎになった電話は、電波が届かない所にあるか、電源が…

あれ、おかしいな。今日の分の業務は終了でもしたか?
夜勤の運転手もいるはずだし、前もこれぐらいの時間にかけて繋がったよな。はてさてどうしたものか。

野宿するにも真夏だというのに少し肌寒い。
今日なんて過去最高気温だったのに。
近くのベンチに腰掛けて少し休むとするか。



プルルルル、プルルルル、プルルルル…

見慣れない電話番号からの着信音だな、とりあえず出てみるか。

<貴方をお迎えに参りました。
 タクシーが迎えに来ますのでもう暫くお待ちください。>

タクシーなんて呼んだっけな?でも迎えが来るんだ。有難く乗せてもらうとしよう。
あのタクシー会社のオペレーター、いつもは男性の声だったよな?今日はたまたま女性社員なのか?

<約20秒後、短いクラクションと共に夜の色と同じ色のタクシーが車内のライトと行灯前後のライトだけを灯してやって来た。目の前に停ると静かに後部座席のドアが開いた。〉

〇〇までお願いします。

<妙に顔が見えない運転手。バックミラーにすらその顔は映っていない。それにいつもなら目の前に明るく照らされるタクシーサイネージも今日に限って電気がついていない。>

家に帰れるならなんでもいいや。

<車が発進したが街頭も明かりも何も無い、ただあるのはタクシーから発せられる明かりのみ。>

運転手さぁ〜ん、これちゃんと○○に停まるんですかぁ?

<再び酔いが回って来た。運転手は何も答えない。ただひたすら闇に向かって走る車>

<"目的地"にはちゃんとら逝きますよ。お望みかどうかは別ですが。>

目的地に行けるならなんでもいいや。

そういや、運転手に首あったっけな?





酔いが覚めるのか先か、"目的地"に着くのが先か……

そしてここは本当に駅の終点なのか…人生の終点なのか…





『終点』

8/10/2024, 12:50:13 PM