【世界線管理局 収蔵品
キンモクセイの香水瓶シリーズ
「誘竜香」】
成分解析により、心身双方の疲労に対して、快復・鎮静の効果がみとめられた。
過度過剰な免疫活動を抑制するため、
いくつかのアレルギー症状を緩和・治療できる可能性が示唆されている。
なお本来の用途はドラゴン種を誘い出すことにあり
ドラゴン種にとっては逆に疲れる
<<ドラゴン種にとっては逆に疲れる>>
――――――
自分が特に好きじゃないジャンルや世界でも、
そこに好奇心や興味のひと欠片でもあれば、ちょっと見に行って情報を得てくるのも、執筆スキルの経験値かなと思う物書きです。
なお、この物書きがそれを実践してる/してないに関しては触れません。
という即効のお題回収は置いといて、今回のおはなしのはじまり、はじまり。
「ここ」ではないどこか、別の世界に、世界線管理局なる厨二ふぁんたじー組織がありまして、
そこの法務部執行課の、実動班特殊即応部門の部門長は、ビジネスネームをルリビタキといいます。
ルリビタキは強く賢いドラゴン種の1匹。
諸事情により管理局に自分を売って、故郷の世界を救ってもらって、
それからというもの、管理局の法務部でコツコツ、大事な仕事をしています。
ルリビタキの世界を救ってくれた法務部局員は亡くなって、既に管理局に籍はありませんが、
それでもルリビタキは、義理深く、売られた場所でコツコツ、大切な仕事をしておるのです。
ところでそんなルリビタキ・ドラゴンは
上述のとおり正真正銘のドラゴン種でして。
「!」
その日ルリビタキ・ドラゴンは、管理局内に整備されている難民シェルターの草原で、
こっくり、こっくり、昼寝をしておったところ、
突然、とんでもなく暴力的な、ドラゴンの本能に直接アタックしてくるレベルの香りが、
だいたい1km圏内で、無機質かつ一方的に、自分を呼んでいるのを知覚しました。
そうです。例の「誘竜香」です。
誰かが香水の瓶をガチャンと割って、大量にブチまけてしまったのです。
ぐるる、ぐるるるる、
ルリビタキ・ドラゴンはノッシノッシ、
香りの発生源に向かって歩き出します。
ぐぎゃ、ぐるるる、
ドラゴンが発生源たる公園に到着しますと、
瓶を割った誰かは逃げてしまって、ひとりも、1匹も、誰も居ませんでした。
どうやら、このドラゴン以外に、近辺にドラゴンは居なかったようです。
「……」
くんかくんか、クシュン、くんかくんか。
ドラゴンは別に、その香りが好きじゃないのに、
といっても嫌いでもありませんし、
なにより香りそのものが、ドラゴンの本能を暴力的に打ちのめしますので、
ただただ、香りをかぎます。
そしてドラゴンの本能が、「この香りをカラダに付けなければならない!」と命じますので、
ゴロゴロゴロ、すりすりすり。
ドラゴンは本能に従って、香水がブチまけられたあたりにカラダを擦り付けます。
ぐるる、ぐぎゃ、ぐるるるる。
ゴロゴロすりすりすり。
再度明記しますが、ルリビタキはとっても強くて、とっても賢いドラゴンです。
ゴロゴロごろ。
別にルリビタキは、その気になれば、不屈の精神でもって本能に抵抗することもできるのです。
スリスリすりすり。
本当です。本当に、ルリビタキは賢いのです。
「わあ!ルリビタキ部長さん、ごめんなさぁい!」
そんなこんなで十数分、数十分、スリスリしてゴロゴロ満足したドラゴンです。
「ちがうの、あたし、キンモクセイさんの香水割っちゃったから、掃除のための道具をとりに行ってただけなのぉ!ホントにごめんなさぁぁい」
香水成分を完全に除去できる掃除用具を持ってきたお嬢さんがドラゴンを見つけて、
ドラゴンがあんまり満足そうにゴロンチョしておりましたので、
やってしまったと、すぐに謝ったのです。
ぐぎゃ?ぐるるるる。
世界線管理局の法務部執行課、実動班特殊即応部門の部長・ルリビタキは気にしません。
ただ「好きじゃないのに、しかし嫌いでもない香り」の近くで、満足しておりましたとさ。
3/26/2026, 6:05:25 AM