かたいなか

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袋の中のポテチを酸素による酸化から守るため、使用されている技術を窒素充填というそうです。
というお題回収は置いといて、今日のおはなしのはじまり、はじまり。

「ここ」ではないどこか、別の世界に、「世界線管理局」という厨二ふぁんたじー組織があり、
そこの規格外にデカい難民シェルターは、ガチの意味で「規格外」にデカく、
滅んでしまった世界からこぼれ落ちた難民たちを、
何万、何千万、いいや何億と、収容していました。
三食おやつ、昼寝付き。キャンプ用の山やバーベキュー用の海もあり、余暇だって充実。
あんまり居心地が良いので、収容された者の中には、そこを「楽園」、「天国」、「浄土」と言うものさえ、居るほどでありました。

そんな難民シェルターは、管理局の技術で作られた人工太陽が、1年区切りの正確な運行計画のもと、定時で昇って定時で沈みます。
今回のおはなしでは、ちょうど夜。
最近収容されてきた難民の子供たちが、管理局の職員であるところのドラゴンと一緒に、
ごおぉぉぉ、ごわおぉぉぉ、
キャンプファイヤーを、楽しんでいます。

「火だ!」 「火だぁ!」 「明るいなぁ」
難民の子供たちは日常的に火を使う種族でないのか、
大きな大きなたき火を、とても珍しそうに、すごく瞳を輝かせて、興奮しながら見ています。

あるものは火の粉に手を伸ばし、
あるものは「この先進入禁止」の柵から身を乗り出してでもたき火に近づこうとして、
そして、美しい赤とオレンジと黄の色をした激しい酸化反応は――すなわち酸素のお題回収にふさわしい光の世話をするドラゴンは、
ごおぉぉぉ、ごわおぉぉぉ、
時折火を足して、あるいは湿った風を送って勢いを弱めて、ともかく虚無顔をしておりました。

だって子供たちが云々。

「悪い竜神さま!もっと火、大きくして!」
「悪いりゅーじんさま!もっと!もっとぉ!」
「わりゅーじんさま、ましまろ、すまー」

大勢の子供たちはキャンプファイヤーに釘付け。
でも他の子供たちは、管理局のドラゴンに登ったり、尻尾を引っ張ったりして、まだまだ遊び足りないようです。絵本を読めとせがむ者もおります。
「わりゅーじんさまー」
おやおや。管理局のそのドラゴンは、「悪い竜神様」として認識されているようですよ。

何故でしょう? すべては前々回投稿分です。
何故でしょう? ドラゴンがそう言ったのです。
あんまり子供たちがドラゴンを、遊べあそべとモミクチャするので、ドラゴン、子供たちを怖がらせようとしたのです――が、失敗したようで。

「わぁー!!」 「きゃー!!」
キャンプファイヤーを見ていた子供たちから、歓喜の悲鳴と興奮の大声が上がりました。
酸素による燃焼反応に、別の粉が割り込んで、
一気に、ごうごうと、ピンクだの黄緑だの、別の色でもって光りはじめたのです!

「悪い竜神さま!!もっと!もっと!もっと!!」
「わりゅーじんさま、もっとぉー!!」
こうなっては子供たち、制御不能です。
「悪い竜神さま」に次をねだり、更に瞳を輝かせ、完全に夜ふかしモードとして覚醒するのです。
「友達起こしてくる」
「おれも」
「ぼくも」
しまいには仲間を呼んでくる始末。

ああ、ああ。酸素よ。
汝、医療現場の酸素ボンベからロケット燃料の酸化剤まで幅広く活躍しているオールラウンダーよ。
すなわちお前の燃焼反応は、このおはなしのガキんちょにとって完全に魔法の芸術なのです。

『……』
で、そのガキんちょたちは、これだけ運動させて疲れさせているのに、いつになったら寝るんだ。
ごおぉぉぉ、ごわおぉぉぉ。
管理局のドラゴンは、酸素の激しい反応を世話して、制御して、時折見飽きるので色を変えて。
虚無目のまま、子供たちがたき火でケガなどせぬよう、ちゃんと見守っておったとさ。

5/15/2025, 6:48:17 AM