烏羽美空朗

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ゴミはないけど生活用品も足りない部屋の真ん中で、今日も彼は本と原稿用紙に押し潰されながらすやすやと眠っていた。
まるで事件現場のようなその光景に最初の頃はいちいち慌てていたが、意外にも穏やかな彼の寝顔を何度も見せられるうちに、今ではすっかり慣れてしまった。むしろ、今日はしっかりと眠れているんだ、というホッとした安心さえも感じてしまう。

とりあえず上に乗っかっている本を退けたり、原稿用紙を順番通りに集め、机の上に置いたりと彼の発掘作業を始める。もちろん、気持ち良さそうな彼を起こさないように。
毛布を掛けてやったら、次は夕食作り。
どうせ今日も何も食べていないんでしょ?

どんなにどんなに彼を思い、奉公し、共に過ごしても、私はずっとファン一号。彼の鋭い瞳はいつも文字を睨みつけ、私のことなどほとんど放ったらかし。彼の頭の中にはいつでも作品のことばかりで埋め尽くされているの。私が入り込む隙なんてない。

でも、そんな真っ直ぐな彼が、私は大好き。
作品だけじゃない。最早執筆することが自分の心臓を動かすのに唯一必須だと思いこんでいるかのような、そんな、目を離したら忽然と消えていそうで、どうにもほっとけない彼自身が大好き。

あなたとわたし

11/7/2022, 1:22:48 PM