「次は〜神奈川〜」
電車のアナウンスに最寄り駅の名前を呼ばれ、重い瞼をゆっくりと開く。
いつもは前の駅で自然と目が覚めるのだが、今日は疲れているのだろう。
寝ぼけた頭を起こすために音楽アプリを開きお気に入りの曲を流す。一昔前の流行りの曲。今の曲と比べると音質の差もあるがメロディは単調でベースもドラムも軽い。
ただそのぐらいが寝起きの頭にちょうど良かった。
最寄り駅に着き帰路についても曲を流していた。
時間はお昼に近い朝。登校中の生徒はいないが散歩している親子がいるような時間。
気持ちのいい日差しが夜勤明けの身体を蝕み、疲労感を足していく。
仕事を終えるとこの時間に帰るのが当たり前ではあるのだが、世間様と時間感覚がズレていくのは慣れたもんじゃない。
耳に入る音楽が周りの雑音を消してくれなければ、家に着く前に発狂してしまうかもしれない。いや実際はそんなことにはならない。そんなことをする体力もなければ常識の枠から外れる勇気もない。
そんな不毛なことを考えていると、無意識のうちに家の鍵を開け帰宅していた。
「ふぅ〜はぁ〜生き返る〜」
それからルーティンのご飯、お風呂、洗濯を済まし、あとは疲れた身体を布団に預けるだけとなった。
ここまでくると心も軽くはなるが明日も仕事だと思い出しては少しため息が出る。
でも眠くなるまでの少しの自由時間ぐらいは仕事のことは忘れておこう。
そう思いながらいつも通り据え置きゲームの電源を付ける。そしてオンラインで敵と戦うゲームを起動する。敵を倒せば喜び、知らぬ間に倒されれば叫ぶ。
何も自分の思い通りにはいかないサバイバル。非日常感が脳を包み込む。それが快楽となり気持ちが軽くなる。
「楽しい〜!」
仕事終わりの至福の時間。取って付けたような余暇ではあるが、人を守る仕事をしている以上、ストレスは消していきたい。
ここまでプライベートを仕事に合わせて調整しているのだから、どうか仕事上関わる人ぐらいは幸せになってほしい。
たとえ、片足がなかろうが言葉も出せなかろうがベットから動けなかろうが。幸せに生きて欲しい。
『幸せに』
3/31/2023, 9:52:54 PM