Open App

冬は嫌いだ。
何より寒いのが駄目。人類はなぜ冬眠をしないのだろうか。熊もリスも冬眠をするのに、人類が冬眠しないなんておかしな話だ。
もしも、一年間が夏か冬かの二つの季節しかなければ、絶対に夏が良い。冬だけはごめんだ。
そんなことを考えながら布団の中から出られずにいる。
「冬美。早く起きないと学校遅刻するわよ」
母が階段の下から叫ぶ声がする。
「あと五分」
私はいつもの決まり文句をいうと、扉の外から階段を駆け上がる音が聞こえた。
勢い良く扉が開くと、扉の前には母の姿が。
「五分前にも同じこと言ったわよね?」
「そ、そうでしだっけー」
布団に潜って誤魔化そうとする私から母は容赦なく布団を剥ぎった。
私の悲鳴には見向きもせずに母は布団を持ったまま、部屋から立ち去った。
「母上もまだまだ甘いな」
私は母が階段から降りたのを確認して、押し入れから予備の布団を引っ張り出した。
出したばかりの布団は少しひんやりして、冬のはじまりをを感じた。

11/29/2023, 11:46:53 AM