茶々

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 弓道場脇の藤棚の下。ここがいつもの待ち合わせ場所だ。薄紫の花びらが降り注ぐ今の時期はとても心地いい。
 目の前をちらほらと部員らしき生徒が横切る。真澄が来るのももうそろそろだろうか。
 「俺思ったんだけどさ、真澄ってマジでキレーな顔してるよな。イケメンとは別ベクトルのさ」
 「わかるわ、てか時々同じ性別か疑いたくなる。指先まで綺麗とか何事?」
 そう各々に話しながら通り過ぎていき、我が彼氏ながら鼻が高くなる。しかし…コロコロと変わる表情も愛嬌のある笑い方もするのにそれを知らないとは。知って欲しいような知って欲しく無いような、複雑な心境ではある。
 「柊真(しゅうま)?ぼーっとしてどした?眼鏡もそのままにして」
 「んぇ真澄?!いつの間に……」
 別になんでもないと言えば、それ以上深堀はしてこなかった。
 ただ、どんなに愛らしくても自分の唇を奪われるとは思ってもいなくて。今後も油断ならない真澄には気をつけなければ、いずれ手に負えなくなるかもしれない。

お題:『ただし、ご注意を』

6/9/2024, 10:30:22 AM