旅路の果てに
長い長い旅をしてきたような気がするけど、何があったか、どんな経験をしたか、よく覚えていない。
ただ今は、視界いっぱいに砂漠が広がっていたし、足元に視線を落とすとダークブラウンの作業用ブーツを履いていた。
荷物は何も無い。
水筒すら持っていない。
天気はいい。
空は水色。
日差しが強い。
暑いか暑くないかといえば、不思議と暑くはなかった。
まだ旅を続ける気かと問われたら、正直、勘弁願いたい。
誰の足跡も残っていない砂の上を歩く気には、とてもじゃないがなれなかった。
たとえば隣に誰かがいたら、進む気になったかもしれない。
残念ながら、ここには自分ひとりきりなのだ。
振り返ったら、誰かがいるかもしれない。
でも、もし後ろにも誰もいなかったら?
だだっ広い砂の海を前に、だらしない音のため息を吐き出した。
2/1/2024, 9:09:43 AM