放課後の私以外誰もいない、シーンと静まった教室。
窓際の席から外を見ると、夕陽がこっちを見ていて、目が合う。
彼氏に別れを告がれてから一週間。
ただでさえすごく落ち込んでいたのに、今日は彼氏が女子と手を繋いで歩いているのを見かけてしまい、更に落ち込む。
だからこうして、一人で教室でぼーっとしているのだ。
はぁ……私も夕陽のように溶けてしまいたい。
「なぁ~に黄昏てるんだよ」
ぶっきらぼうな声が教室内に響く。
振り返って確かめる必要はない。
この声は、間違いなく幼馴染みの健だ。
一人になりたいのに、なんでこういう時に限ってコイツが来るんだろう。
「まだ元カレのことで引きずってるのか?」
「うっ……」
しかも傷をえぐってくるし、なんなのコイツ……。
「まぁ、別れて正解だったんじゃないか?あいつ、今は別の女と付き合ってるし、浮気癖があるって噂だしな。合わなかったんだよ、お前と」
「……」
何も言えなかった。
友達にも「浮気癖があるみたいだから気をつけたほうがいいよ」と言われていたからだ。
「……で?あんたはここへ何しに来たのよ?」
振り返らず、夕陽に向かって健に言った。
「ふら~っと廊下を歩いてたら、下校時間なのに教室で動かない奴がいたから声を掛けたんだよ」
「ふ~ん……」
「最近は陽が落ちるのが早くなったからな。暗くなる前にさっさと帰ろうぜ。家まで送ってやるよ。ついでに愚痴も聞いてやるからさ」
「なによ、それ……」
それじゃまるで、私を励ましに来たみたいじゃない。
こういう時にやさしくされるの……なんか、ずるい。
「仕方ないわね……たーーーっぷり愚痴聞いてもらうから覚悟しなさい」
「ドンと来いだ。さっ、行くぞ」
振り返ると、健は私の鞄を持って、教室から出ようとしていた。
「ちょっと!待ちなさいよ!もう!」
私は夕陽と別れを告げ、健のあとを追いかけた。
8/11/2025, 12:12:24 AM