『放課後』
一日の終わりを示すチャイムが人の声に包まれた教室に鳴り響いた。
[はい。じゃあ、気をつけて帰るよーに。]
[あ、中野はちょっと残って。じゃあさよーなら。]
え、嘘。えぇ…まじかぁ….。
何かしたかなぁと思いながら、私は散りゆく人を掻き分け先生の元へと向かった。
「なんですか?」
[ぁあ中野。お前さ、この前の図書委員サボっただろ。]
「あ。すいません、忘れてました。」
[司書の神田先生が資料渡したいって。]
「分かりました。ありがとうございます。」
口ではそう言いつつもわざわざ別の校舎の図書室に行くのはめんどくさかった。重たい足を動かし、私は窓から見える校舎に向かって歩いていた。
「し、しつれいしまぁす。」
中に入ると、中には誰もいなかった。先生を待つついでに、暫く本棚を眺めていた。
普通の人なら行けない受付にも行ってみた。
コロコロつきの椅子でぐるぐる回ってみたりもした。
あれ?何これ。
カウンターの下の方に、DVDのようなものが落ちている。ケースが茶色くなっているから長い時間ここにおいてあったのだろう。目をクラクラさせながら、私はケースを拾った。DVDにはキレイな字で〈あなたへ〉と書かれていた。
『あ…中野さん?放課後に来て貰っちゃってごめんね。』
「あ、いえ。暇だったので、全然。」
先生に言えばよかったのだが、私はDVDをカバンの中に入れていた。
――私が貴方と図書室で出会ったのは、きっと運命だと思う。
10/14/2024, 8:31:32 PM