300字小説
二度目の銀河鉄道
はくちょう座から列車に乗って、銀河鉄道の旅に出る。たたん、たたん、車輪が軽快に枕木を鳴らし、眩い星の海を進んでいく。
まだ幼稚園児の頃、僕は小学生の兄とこの電車に乗ったことがある。夏休みに両親と行ったキャンプ。川遊びで足を滑らせた途端、僕と兄は列車に乗っていた。
『まるで『銀河鉄道の夜』だ』
本を読むのが好きだった兄が熱心に見ていたサソリの火が見えてくる。
あのとき、僕は南十字で降りることは出来なかった。泣いてすがる僕を兄は連れて行ってくれなかった。そして、目覚めたら僕は病院のベッドにいて兄は……。
十字架の星が見えてくる。今度はちゃんと降りられる。兄は迎えにきてくれるだろうか。そっと窓を覗き込んだ。
お題「列車に乗って」
2/29/2024, 12:07:38 PM