hachi

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スライドガラスに試料を一滴おとし、そっとカバーガラスをかぶせ、軽くおさえる。
これを顕微鏡にセットし、光量とピントをあわせると、長細い棒状の生き物が見えてくる。
これは、酵母。有名な卵型の出芽酵母ではなく、細長くて分裂で増える、分裂酵母です。

細長い酵母がさらに長くなり、真ん中に線が入っているものがある。もう少しすると、そこからぷつんと切れて、2つの個体になるのだ。
そうかと思うと、ただの丸もある。なにか別の菌が入ったのかな、と思ってしまいそうだが、そうじゃない。細長い酵母が縦になっていて、それを真上から(真下から?)見ているのだ。これも立派な酵母です。

カバーガラスが張り付いたスライドガラスなんて、人の目には平べったい二次元としか思えないが、彼らにしてみれば、その2枚の間には豊かな三次元が広がっているのだ。縦にも横にも斜めにも、実に自由にしている。

顕微鏡を覗いていると、実はこの世には、何次元も何次元も、たくさんの次元が存在してるのじゃないかな、と思えてくる。

『逆さま』

12/6/2022, 12:56:58 PM