「おはよう」
「おう、おはよう。有給ありがとな。これお土産」
「ありがとう、もらっておこう」
「おう」
「それにしても三十七時間二十七分九秒ぶりだな」
「うん。……うん?」
「三十七時間二十七分九秒ぶりだと言った」
「何ソレ?」
「君と僕が最後に会ってから三十七時間二十七分九秒の時間が経過したということだ」
「えっ、へぇー! そうなんだ。よく噛まずに言えるな」
「昔『外郎売』で鍛えた」
「それ新卒の内定者研修で配られたプリントじゃねえか」
「さて、三十七時間二十七分九秒ぶりの君に伝えなきゃいけないことがある」
「え、そんな一日出勤しなかっただけで何かあるのか?」
「席替えがあってね、君が今座っている席は僕の席になった」
「えっごめん! 勝手に座ってた」
「君の席はあっち」
「あっちって」
「部長の目の前だ」
「最悪だ」
「課長も近いぞ」
「嬉しくねえよ」
「印鑑もらいやすい」
「責任者を印鑑係にするな、罰当たりが」
「お菓子もらえる」
「それはお前以外はできない芸当だ」
「ほら、就業時間だ。さっさと移動しろ」
「はーーーい」
『君と最後に会った日』
6/26/2024, 1:35:44 PM