静かな終わり
十二月三十一日。
世界が少しずつ、丁寧な手つきで閉じられていく。
外を見ていたクロが、小さく鼻を鳴らした。
銀色の毛が混じった背中に触れると、
確かな体温が手のひらに伝わってくる。
「もうすぐだね」
呼びかける声は、冷えた空気に吸い込まれて消えた。
遠くで、最初の除夜の鐘が鳴る。
重く、深い、青い音。
それは何かの終わりというより、
積み上げた日々を、静かに許していく合図のよう。
クロは大きなあくびをして、私の足元で丸くなった。
特別なことは、もう何もいらない。
ただ、この静寂を分け合える命が隣にあること。
それだけで、この一年は完成していたのだと思う。
12/29/2025, 2:27:28 PM