仮色

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【雪を待つ】

「おかあさん!みて、ゆき!」

夜になって閉めていたカーテンをいっぱいに開いて、娘が私にそう言った。
窓の外を見ると雪がちらちらと落ちてきていて、地面につくとしゅわっと溶けて消える。

「初雪ね〜、今日はあったかくして寝ましょうね」
「ねえおかあさん、あしたつもるかな!?」

娘の言葉に、ちょっと待ってと伝えてスマホで天気予報を見る。
明日の天気は雪だるまのマークになっていて、今夜から明日までは降るらしいことが分かった。
娘に雪だるまマークが写った画面を見せて、そのことを伝える。
すると直ぐにきらきらとした目に変わって、興奮したように「やったぁ!」と声を上げた。

「今日は早く寝て明日雪で遊びましょう」
「うん!おかあさんおやすみー!」

一瞬の内で寝室に消えていった娘に、思わず苦笑いしてしまう。
雪を前にした行動が小さい頃の私にそっくりで、子は親に似るんだなと改めて感じた。

『おかあさん、ゆきふってる、ゆき!』
『はいはい、あったかくして寝るのよ』
『あしたゆきであそべるかな?』
『もちろん、だから早く寝ましょうね。分かった?』
『うん!』

薄れていた昔の記憶が蘇ってきて、懐かしい気持ちになった。
セピア色の景色の記憶を、頭を振って散らす。

「ん〜…、私も寝よう」

愛する娘のいる寝室に、私は足を向けた。

12/15/2023, 1:40:45 PM