かたいなか

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「5月8日、『「一」年後』の漢数字版で、このお題書いてたわ。あと6月16日が『1年前』だった」
よもや漢字違いで同じお題がもう一度来るとはね。某所在住物書きは過去投稿分を辿り、5月8日と9日の文章を読み直して文章を組み始めた。
「『今日から数えて』1年後だったら、2024年6月24日のハナシだが、『〇〇を実行する』1年後、とかならずっと未来のハナシも書ける。1年後『〇〇しようね』って約束とその結末も執筆可能よな」
こういう、アレンジが容易で、書きやすいお題が重複するなら、こっちも嬉しいんだがねぇ。物書きは恒例にため息を吐き、次に来るであろう題目を思い……

――――――

呟きアプリでちょっと浮上して、例のシステム障害の混乱で消えた気がするハナシ。今日6月24日は「林檎忌」で、昔の歌姫さんの命日らしい。
林檎の歌を歌った人だから「林檎忌」、って言うとか。歌詞にダイレクトに「つがる」って入ってたから、青森の人なのかなと思ったら、神奈川県横浜市のご出身。ここ東京から見て、ご近所もご近所だ。
別に推してないから追悼ツイとかしないけど、昔こういうひとがいたんだな、ってことは覚えた。
そうだ。林檎。

「先輩1年後、先輩の故郷の林檎の花見連れてってくれるって約束、ちゃんと記憶してる?」
「まだ覚えていたのか。その話」

5月8日、ゴールデンウィーク明けの月曜日の話。
全国的に暖かかった春の影響で、多くの地域で桜が早く咲いて、早く散った。
ハートの桜とか桜イカダとかでバズった青森県の桜を、ゴールデンウィークに見に行ったのに、もう散っちゃってたから代わりに林檎の花を見てきた、
って話を、通勤途中、アラサーかアラフォーあたりがしてたのを、聞いちゃったのがきっかけ。
林檎の花を、見たことがない。
どこか知らないけど先輩は雪国の田舎出身らしい。
林檎は、主に雪国で、いっぱい生産されてるっぽい。

それで、職場の先輩に予約しておいた。「1年後の春、先輩の故郷の林檎の花見、連れてって」って。

「林檎も桜も、同じバラ科だ。花はほぼ似ている」
「でも咲いてる場所、お城と畑で違うでしょ」
「お前は花より団子派、アップルパイ派だろう?パイの美味い店なら、隣の区の、」
「はい出ました先輩お得意の話題すり替えー。東京じゃないの先輩の故郷なの。迷惑だったりする?」
「迷惑ではない。……保証が、できないだけだ」

「『保証ができない』?」

1年後の、保証ができない。
近々転職する予定でもあるのかな、と思った。
あるいは故郷の雪国にUターンでもするのかなって。
気になって先輩に聞いたら、先輩はハッキリ、Uターンではない、って否定した。
「ただ、……そうだな」
言葉を詰まらせて、十秒くらい考え込んだ先輩は、
「突然失踪とか、する可能性くらいは、意外と……あるかもしれない、だろう」
ぽつり、ぽつり。すごく言葉を選びながら、目を視線を伏せて、一生懸命、冗談っぽい抑揚で話してた。

別に悪いことなんて何ひとつしてない先輩が、なんで、「失踪」なんて重い言葉を使ったのか。
私には、さっぱり分からなかった。
――7月、先輩の初恋のひとに、8年前先輩の心をズッタズタに壊した張本人に、バッタリ会うまでは。

6/24/2023, 10:00:12 AM