髪弄り

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頭痛がする、朦朧として吐き気もひどい、
その上、カラカラと背に降り注ぐ陽光は、容赦なく身体を焼けつけている。

「あつい…」

うわ言のように呟き、歩く、歩く。
靴下に入る砂つぶは、一つ一つが燃えるよう、その上、汗がべたついて、僅かな水分は余計に奪われる。

「……!」
目の前には、青く透き通った砂漠のオアシス、緑乱れ、生命が息づいている。自然と足速となり、紅く痛んだ脚を鞭で打つように働かせる。

着いた瞬間、獣みたいに顔を突っ込み、生命の雫を咽喉に通していく。
渇いた体が潤いをもち、ぼやけた視界は、いくばくかはっきりとした。

助かったという安堵と同時に、疑問と不安が浮かび上がる。

「私はなぜここにいるのだろうか」
私は砂漠の探検隊でも、イスラエルの商人でもない、こんな荒涼とした地に踏み入れるような人間ではない。

そもそも私は一人家にいたはずだ。
一日中、現代的娯楽に勤しみ、深夜のラーメンに満足し、ぐっすり眠りについたのだ。こんな目に遭ういわれはない。

わかったぞ、これは夢なのだ。
明晰夢というのを聞いたことがある。
しかし、夢にしては渇きも、痛みもやけにリアルだ。

突如、私に途方もない恐怖が沸き立った。
声が聞こえたのだ、命じるような機械的な声

「まけたんなら、やり直し」
背筋が凍る。
私は知っていた、この砂漠も、このオアシスも、ああ、そうか、そういうことだったのか。

記憶のダムが決壊し、口をあんぐりした男は、震えながら許しを請いたが、砂漠は全てを砂に変えて、男の言葉を掻き消した。

「まだ終わらないの?」

「ええ、なかなか難しいようで…」

「もういっそのこと、あなたが私の息子ならいいのに」

「私は単なるロボなので、彼の感覚を知れる程、人間的にできてはいませんから」

『言葉にできない』

4/11/2023, 11:25:13 AM