──君とだからっていうのもあるかも。
「ここが天国かもしれない」
「ちょっと落ち着こうか」
顔を覆って震えながらそう呟くと、隣から至極冷静な声が飛んできた。
***
死ぬまでに、どうしても行ってみたい場所がある。
水中図書館。
古代魔法が隆盛を誇った遠い昔、本を愛した一人の魔法師が生み出した不思議な場所。
それは山奥の巨大な湖に建っている。正しくは、沈んでいる。
当時は魔法の全盛期であると同時に、戦乱が絶えない世でもあった。何よりも本を大切に思った魔法師は、それらを後世に残そうと、誰も入って来られない湖中に図書館を作った。水に弱い紙を守るために、永遠に続く特殊な保護魔法を全ての本に施して。
──本を愛する者だけがこの門を潜る権利を待つ。
水中に沈む図書館の門に刻まれた文には魔法が込められており、貴重な本を持ち出して悪用しようと考える人間は建物に触れることすらできない。さらには、いつの間にか湖畔に打ち上げられているという。
(理想郷)
後日加筆します。水中にある図書館、浪漫がありますね。
10/31/2024, 11:55:32 AM