男子高校生の妄想

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『涙の理由』

あなたと出会った日、僕は泣いていた。
クラスで人気のあなたは僕の手を握って黙っていてくれた。
 
あなたが僕を恋人に選んでくれた日、僕は泣いていた。
あなたは一度握った手を離そうとしなかった。

初めてデートに行った日、僕は泣いていた。
あなたは僕と喧嘩をしても最初に待ち合わせた場所から帰るときまで恋人繋ぎをやめなかった。

あなたが僕のプロポーズを受けてくれた日、僕はもう泣かないと決めた。
あなたは僕の手を握りしめながら、ただ、泣いていた。

妊娠が発覚した日、手を繋ぎながら僕は泣いてしまった。
あなたも嬉しそうに泣いていた。僕と手を繋いぎながら。

出産した日、僕たちの天使が生まれた日、僕は世界で一番の幸せ者になった。
あなたは僕の手を握りしめながら、僕たちの子を抱いていた。

反抗期、娘が家出をした日、僕は家の近所を真夜中になっても走り回っていた。
あなたはいつ娘が帰ってきてもいいように家で待っていてくれた。

娘が成人した日、僕はあなたと手を繋いでいた。
最期には3人で手を繋いで、写真を撮った。

定年退職をした日、僕はいつものように出社し、送別会には参加せずにまっすぐにあなたの待つ我が家へ帰った。
あなたは僕が帰ってくるやいなや、お疲れ様と言って僕を抱きしめた。二人で手を繋ぎながら久しぶりに映画を見た。

定期検診であなたに癌が見つかった日、僕は泣きそうになりながらあなたと手を繋いだ。
あなたも不安そうな顔で僕の手を震えながら握り続けた。

あなたが旅立った日、僕はあなたの手を繋いで離さなかった。涙でびしょびしょになっている僕にあなたは「今までありがとう。愛していますよ。」と最期に言って目を閉じた。あなたは二度と目を開けることはなかった。

10/10/2024, 1:52:16 PM