夏海

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#たそがれ

【創作BL 】旭と日野1

「こりゃ明日も晴れだな」
中学から通学に使っているのにちっとも油を注さないもんだから、日野のチャリはこぐたびにぎいぎいうるさい。
それなのにしっかり聞き取れる、芯のある日野の声が旭は好きだった。
「夕焼けスゲー」
「だな。真っ赤じゃん」
もうすぐ、また明日って別れる交差点だ。
また明日、朝練で。
そう言って別れ、また半日後にはそこで顔を合わせる。いつものことだ。
それなのに、旭の喉の奥で引っかかった言葉が「またあした」の五文字を言わせてくれない。
交差点で止まり、口を真一文字に結んだ旭の常にない様子に日野がいぶかり自転車を停めた。
いま、聞かなければ。きっと、このまま帰っても旭は眠れないまま夜を明かしてしまう。
じわ、と山の端に溶ける太陽の輪郭に目を焼かれ、涙が滲む。泣きたいわけじゃないのに。
「なあ、昼に築山に告られたん、どう答えた?」
なんとか口にしたものの、声が震えているのが旭自身にもわかった。途端にきゅっと寄った日野の眉間が、ちゃんと聞こえていたんだと教えてくれる。

10/1/2023, 1:00:36 PM