題 突然の別れ
「ごめん・・・」
今日朝小学校に来るなりみのりちゃんはずっとそう言ってる。
「だから、何がごめんなの?言ってくれなきゃ分からないよ」
私は困惑してみのりちゃんに聞き返す。
そうすると、みのりちゃんは頭を振って無言になっちゃうんだ。
泣いてしまうんじゃないかと思って。
みのりちゃんの顔が歪んでいて、私はそれ以上追求できないでいた。
どうして?何がそんなにみのりちゃんを苦しめてるの?
私、友達なんだから、力になりたいよ。
そこへ、先生が入ってきて、ホームルームが始まった。
始まって最初に、先生が口を開いた。
「坂下みのりさんが転校することになりました。海外に行くそうです。残り少ない日数ですが、みんな坂下さんと最後まで楽しく過ごしましょうね」
て、転校・・・?!
私はしばらく固まってしまう。
思わずみのりちゃんの席を見てしまうけど、みのりちゃんは下を向いたままだ。
転校するの・・・?私達一番仲が良かったし、いつも一緒だったのに・・・・。
そんなの・・・寂しい。
それに、最初はみのりちゃんの口から聞きたかった・・・。
休み時間。悲しくて、思わずみのりちゃんが席を立つ前に席を立って、トイレへ駆け込む。
何で、避けてるんだろう・・・と自分にツッコミをいれる。
きっと、私に一番に話してほしかったんだ。
友達っていう立場を過信しすぎてたんだ。
みのりちゃんに信頼されてなかったようで悲しかったんだ。
トイレを出ると、出口にみのりちゃんが立っていた。
「ごめん」
みのりちゃんにそう言われて、私は低い声で「うん・・・」
と言う。
「言えなかったの、避けないで」
2人で歩きながら話す。
「避けてないよ」
と私。
「避けてるじゃん、今も私の顔見ないし」
「それは・・・歩いてるから」
私は苦しいウソを言う。
「ウソ」
瞬時に見破られてしまう。
「・・・ねえ、私だって離れたくないんだよ」
みのりちゃんの目から涙がポロッとこぼれた。
私は涙に胸を揺さぶられる。動揺した。
「泣かないでよ。私も泣いちゃう」
「うん・・・そうだね・・・」
それから、ひとしきり、2人で抱き合って泣いた。
今までの思い出がなぜかスライドショーみたいに浮かび上がってきて、その度に悲しくなってしまう。
「海外だけど、今はネットあるから連絡できるよ」
2人で泣くだけ泣くと、何だか少しスッキリした。
私もみのりちゃんも赤く腫れ上がったヒドイ顔になっちゃったけど。
「そっかぁ、じゃあ、顔見て話せるね♪」
私はとたんに少し楽天的な気持ちになる。
「私達、ずっと遠くに行っても友達だよ」
みのりちゃんの泣きはらした笑顔に、私も頷いて、彼女の手を取る。
「うん、ずっと友達だよ、約束」
そうして、小指を絡めて私達は遠く離れてもずっと友達でいることを誓ったんだ。
5/19/2024, 4:04:53 PM