一夜の夢

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君はふらつきながら顔を上に向け、思い切り口を歪めた。ビール瓶を持った手を突き上げ、あいまいな空を怒鳴りつける。

「なんて空模様だ!降るか晴れるかどっちかにしろよ!」

僕はどうにもおかしくて、くすくす笑いが止まらない。
君の赤らんだ顔。くしゃくしゃのシャツ。僕のネクタイはいつのまにか、どこかへ消えてしまった。
君は僕を睨んだ。

「おい、笑うなよ。おまえも一言言ってやったらどうなんだ」
「……空に?」
「そうだよ」

僕はにやりと笑って、ぐずつく空を見上げて叫んだ。

「降るなら早く降れよ!」
「いいぞ、その調子だ」

君は満足気に僕の背中をばしばし叩く。
背中はひりひり痛んだが、僕はとても嬉しかった。
すでに君の目は半分閉じている。
空が怒って本気で降り出す前に帰ろうと、僕は君の肩を押す手に力を入れた。

6/14/2024, 6:28:16 PM